血管カテーテルにアクセスする際の感染症リスクを低減するための課題および解決法

Elliott S. Greene, MD

緒言

米国の急性期病院では、患者の3.2%が1つ以上の医療関連感染症(Health care-associated infections: HAI)を発症し、その結果、患者の罹患率、死亡率、入院期間、医療費が増加している。1 カテーテル関連血流感染症(Catheter-related bloodstream infections: CRBSI)は、HAIの原因として最も多く、中枢ならびに末梢血管カテーテルで生じうる。1 米国では毎年、約250,000件のCRBSIが短期的 ・長期的血管カテーテルから発生し、敗血症を含む重篤な状態のほか、それ以外の合併症や死亡に至っている。1 2014年、米国の急性期病院で、31,000人以上の患者が中心静脈関連血流感染症(Central-line-associated bloodstream infection: CLABSI)を生じており、その医療費は年間6~27億ドル、死亡率は12~25%と推定された。 1 CLABSIの発生率は通常カテーテル留置日数1000日あたり1.1~2.5件の範囲で、一件あたり平均10.4日間入院期間が延長し、45,000ドル以上の費用が追加されている。1 1980年から2106年までの短期的末梢静脈カテーテル(PIVC)留置によるCRBSIのレビューでは、感染発生率(カテーテル留置日数1000日あたりではないもの)はカテーテル留置1000回あたり1.8件であった。2014年の研究では動脈カテーテルのCRBSIの発生率はカテーテル留置日数1000日あたり1.26件であり、大腿部位のCRBSIリスクは橈骨部位の1.9倍であった。1 血管カテーテルの微生物汚染は、1)挿入部位からの遠位移動が関与するカテーテル外表面を介した管腔外経路、もしくは 2)カテーテルアクセス時に発生する可能性のある管腔内汚染のいずれかにより生じ、血行性散布や注入液の汚染によるものは少ない。

麻酔やその他の患者ケアを行う際の血管カテーテルへのアクセスは日常的であるが、医療従事者は血管カテーテルアクセスに関連するHAIのリスクを減らすための最適な方法を使用しているだろうか?血管カテーテルにアクセスする際に手指衛生と無菌操作が行われていない場合、注入ポート(オープンルーメン三方活栓[Open Lumen Stopcock: OLS]や消毒可能なニードルレスクローズドコネクタ等[Disinfectable Needleless Closed Connector: DNCC])の微生物病原体による管腔内汚染を生じ、CRBSIやその他のHAIにつながる可能性がある。1-3 残念ながら、麻酔科医の手指衛生順守率は低く2.9%から18%の範囲である。1,4 調剤時や臨床投与時にシリンジや注入物が汚染され、汚染された内容物が血流に注入されたり、アクセスポートが汚染されたりする可能性がある1,2,5-7、調剤および薬剤・液体投与時の汚染や誤用を減らすために、メーカーや薬局が用意した薬用注入器および注入物の使用を増やしていくことを麻酔患者安全財団や米国感染管理疫学専門家協会、安全な医療実践のための疫学研究所が推奨している。1,2,5,6 また疾病予防管理センターも安全な注射の実践に関する推奨事項を提示している。7 本稿はOLSとDNCCの使用に関連する汚染と感染のリスクを比較および対比し、DNCCの消毒に関する推奨事項や未解決の問題について考察する。

OLSおよび消毒されたDNCCの汚染・感染のリスク

OLSは、麻酔中に一般的に使用されているが、管腔内表面の汚染は、麻酔症例の最大32%から38%で生じている可能性がある。8,9 70%イソプロピルアルコール(IPA)パッドやポートスクラブデバイスではOLSを効果的に消毒することはできない。3,10 OLSは蓋が取り外し可能なデザインで管腔内表面が曝されるため汚染されやすい(図1)。DNCCの50%以上は、適切な消毒を行う前に注入面が細菌で汚染されているが11,12 、DNCCの注入面は、アルコール含有パッドで擦るか、もしくはIPAキャップを使用すると極めて効果的に滅菌することが可能である(図2)。1,3,11-17 注入ポートに関する最近のレビューでは、10研究中8研究でOLSと比較して消毒済みDNCCによる管腔内汚染の割合が有意に低く、7研究中2研究において消毒済みDNCCのCLABSIまたはCRBSIの確率がOLSと比べて有意に減少していた。いくつかの研究では汚染率と感染率の両方を評価していたのに対し、他の研究では、単一のアウトカム、すなわち汚染率か感染率かのいずれかのみを評価していた。1 これらの研究においてOLSとDNCCがどちらもアクセス前に消毒されていた場合のサブグループを調べると、9研究中7研究においてDNCCの管腔内汚染の確率がOLSに比べ有意に低く、4研究中1研究においてDNCCのCLABSIの確率が有意に低かったことが明らかになった。1 消毒済みのDNCCよりもOLSの方が有益であったことを示す研究はなかった(表1)。1

図 1:オープンルーメン三方活栓 (Open Lumen Stopcock: OLS)

図 1:オープンルーメン三方活栓 (Open Lumen Stopcock: OLS)

図 2:消毒可能なニードルレスクローズドコネクタ (Disinfectable Needleless Closed Connector: DNCC)

図 2:消毒可能なニードルレスクローズドコネクタ (Disinfectable Needleless Closed Connector: DNCC)

表 1:消毒可能なニードルレスクローズドコネクタ(DNCC)とオープンルーメン三方活栓(OLS)の比較

表 1:消毒可能なニードルレスクローズドコネクタ(DNCC)とオープンルーメン三方活栓(OLS)の比較

略語:DNCC三方活栓、注入管腔に付着(望ましくは結合)したDNCCを備えた三方活栓。 HAI、医療関連感染症; IPA、70%イソプロピルアルコール; SHEA、米国医療疫学学会

微生物の注入およびバイオフィルム

アクセス前にDNCCの消毒が行われなかった場合や臨床使用時にOLSが汚染された場合、管腔内汚染が生じ1,15、カテーテル表面にバイオフィルム(細胞外基質の多糖類に微生物が埋もれているもの)が形成され、HAIのリスクが増加する可能性がある。18,19

アクセス前にDNCCの消毒が1回行われないだけでバイオフィルムが形成しうる。19 残念ながら、DNCCの消毒コンプライアンス(手指衛生消毒や無菌操作等)は、医療従事者にとって課題とされてきた。1,15,20 既存の文献では抗菌剤に対するバイオフィルムの防御メカニズムについて完全に説明されていないが、菌体外多糖は抗生物質がバイオフィルムの基質を通過して細菌に届くのを防ぐ働きをする。21
またバイオフィルムは、宿主の免疫系に耐性を示す可能性がある。22,23 したがってバイオフィルムは菌血症や慢性感染症の原因となりうる。21-23 In-vitro研究では、白血球がバイオフィルムに効果的に通過しうることを示唆しているが、動物を対象とした研究ではバイオフィルムの形成により宿主の免疫応答が「炎症の殺菌反応」から「抗炎症性の線維化反応」へと「回避」されることが示された。22 このようにカテーテルや留置したその他の医療機器の表面で形成されるバイオフィルムは、細菌を保護し、感染の持続を促している。22

微生物注入のメカニズムは、OLSおよびDNCC汚染とその後のHAIのリスク増加との関連の説明になりうる。1,14 血流への不注意な直接微生物注入は、汚染されたOLSを介した場合や注入前にDNCC注入面の消毒が不十分な場合に生じうる。汚染された注射器または注入液が使用された場合、偶発的な直接微生物注入も発生する可能性がある。1,2,5-7 臨床麻酔中に実施されたex-vivoランダム化比較試験(RCT)では、DNCCまたはOLSがアクセス前に消毒されなかった場合、注射ごとに約10,000コロニーの細菌が試験回路に入った。14 この研究では、消毒されたDNCC三方活栓(70%アルコール[方法は指定されていない]、30秒間の乾燥)を使用した場合、OLSまたは消毒されていないDNCC三方活栓と比較して、偶発的な細菌注入の発生率が大幅に低くなった。14

米国医療疫学学会(Society for Healthcare Epidemiology of America, SHEA)による最近の勧告

米国医療疫学学会(SHEA)は最近、麻酔現場における感染予防ガイドラインを発表した。15 SHEAは、薬剤を注入するための三方活栓にOLSを使用するよりも消毒済みDNCCを使用することを推奨している。24,25 SHEAはまた、「圧トランスデューサーの三方活栓は、トランスデューサーを校正するために定期的に開けられる」ため「これらの三方活栓は、ニードルレス注入ポート(DNCC)よりも滅菌キャップでカバーする方が適切である」と記載したが、トランスデューサーが空気に触れている際に管腔内の無菌状態を維持する方法については触れていなかった。25 圧トランスデューサーのゼロ点調整を行うために使用する三方活栓が管腔内の無菌性を維持することが重要である。一方、ゼロ調整中のキャップの取り外しの不要な「小さい」(管腔よりもはるかに小さい)穴のついたキャップを含むトランスデューサーも存在する。この「小さい」管腔は継続的に環境に開放されているため、管腔内の無菌性が維持されているかどうかは不明である。さらに、このキャップが三方活栓に接着されていない場合、ゼロ点調整中にキャップを取り外し、管腔内表面が潜在的な環境汚染に完全に曝されることになり、使用者はこのキャップの設計の潜在的な利点を享受できないかもしれない。ゼロ調整の管腔に細菌フィルターが取り付けられた三方活栓はもう一つの選択肢となりうる。

消毒済みのDNCCを介する血管カテーテルのアクセス

上述のように消毒済みのDNCCは汚染や感染症のリスクがOLSと比較して全体的に低く(表1)、SHEAは「薬剤注入の際に使用する三方活栓はニードルレス注入ポートで閉鎖するのが理想的である」と推奨しているのを前提に25、最近の文献では、OLSの代わりに消毒済みDNCCを使用することが支持されている。患者の感染症関連リスクを減らすため、薬剤や輸液の投与、もしくは採血に使用する血管カテーテルのアクセスは、消毒済みDNCC(静脈[IV] チューブセット等)か、消毒済みDNCC三方活栓のいずれかを介して行うものとする。消毒のコンプライアンスは必要不可欠である。DNCC三方活栓については、DNCCが抜けたり、迂回されたりしないように活栓の注入管腔に結合していることが望ましい。1 最近のSHEAの推奨事項25 では、DNCCを使用して動脈ラインから血液サンプルを採取することには言及していないが、現在の研究1 ではOLSではなく消毒済みのDNCC三方活栓を介した動脈ラインセットからの血液採取をすることが支持されている。OLSを臨床的に使用した際に汚染や感染のリスクが消毒済みDNCCよりも高くならない唯一の状況は、OLSの使用が無菌フィールド関連の手技に限られている場合だろう。1

DNCC三方活栓のメーカーが少ない

現在IVおよび動脈トランスデューサーチュービングセットには通常、DNCC三方活栓が付属していない。1 メーカーはIVおよび動脈トランスデューサーチュービングセットにOLSではなくDNCC三方活栓を付属し、DNCC三方活栓を単品で提供すべきである。チュービングセットにDNCC三方活栓が通常含まれていない理由はいくつか存在するが、DNCCの優位性に気づいている医師とメーカーが少ないことや、既存の診療パターンを変更することへの抵抗、費用の増加が挙げられる。それでもDNCCの採用による安全性向上は必要不可欠であり、費用の増加により妨げられるものではない。たとえば、鋭利物による損傷を防ぐ安全装置は、他の装置よりも高価であるが、標準的な安全要件とされている。1,26

消毒方法および消毒の種類

DNCCで使用する消毒の種類と消毒方法は、消毒液の効果を最大限にして望まないHAIを減らすために重要な要素である。1,27 いくつかの選択されたin-vitroや臨床研究の結果において見られた相違は、消毒に関する決定的な推奨事項を定めることの難しさを強調している(表2)。予想されたことだが、推奨される消毒液、消毒方法(擦るvs「拭く」)、消毒時間、乾燥時間、IPAキャップの使用の有無に関する専門家のコンセンサスが不足している(表3)。1 SHEAはDNCCが毎回アクセスの直前や、麻酔導入時など一連の急速注入前にアルコール含有消毒パッド(IPAやグルコン酸クロルヘキシジン[CHG]/IPA)で擦るか(時間の明記なし)、またはIPAキャップを適切に利用することでDNCCを無菌状態にしておくことを推奨している。1,15 数多くのガイドライン1 は、アルコール含有消毒剤を使用して擦ることを推奨しているが、その推奨時間には5秒以上から15秒以上とばらつきがみられる(表3)。31-33 擦る時間が長いとコンプライアンスが低くなるため15、 必要最小限で効果のある擦り時間を特定するために更なる研究を行う必要がある。1 またDNCCの消毒方法が最適でなければ、HAIのリスクが増加するおそれもあるため、様々な方法や消毒液を比較する無作為化試験も必要である。さらに問題を複雑にしているのは、消毒済みのDNCCの感染リスクが注入面の様々な形態やその他のデザイン上の特徴とも関連しており、消毒の有効性に影響を及ぼしている可能性もあることである。12,13,27,35

表2:a,b 1)汚染されたDNCC表面の消毒に関するin-vitro研究および2)DNCC消毒の臨床研究を選抜

略語:CFU、コロニー形成ユニット細菌/ml接種株; CHG、グルコン酸クロルヘキシジン; DNCC、消毒済みニードルレスクローズドコネクター、 IPA、70%イソプロピルアルコール; PIVC、末梢静脈カテーテル。<br /><sup>a</sup> その他の研究については、参考文献Greene <sup>1</sup> を参照<br /><sup>b</sup> 括弧内で囲まれた項目は、各文献で使用されている略用<br /><sup>c</sup> PIVCDNCCの消毒に関する最初の臨床RCT

略語:CFU、コロニー形成ユニット細菌/ml接種株; CHG、グルコン酸クロルヘキシジン; DNCC、消毒済みニードルレスクローズドコネクター、 IPA、70%イソプロピルアルコール; PIVC、末梢静脈カテーテル。

aその他の研究については、参考文献Greene1 を参照

b 括弧内で囲まれた項目は、各文献で使用されている略用

c PIVCDNCCの消毒に関する最初の臨床RCT

表3:a,b DNCCの消毒に関する国内および国際機関の推奨事項を選抜

略語:APIC、感染管理疫学専門家協会; CDC、米国疾病管理予防センター;CHG、グルコン酸クロルヘキシジン; CLABSI、中心静脈関連血流感染症; IPA、70%イソプロピルアルコール;NM、勧告に​​は記載されていない。SHEA、米国医療疫学学会<br /><sup>a</sup> その他のガイドラインについては参考文献Greene,<sup>1</sup> Hallam<sup>34<br />参照。</sup><sup>b</sup> 括弧内の項目は、各文献で使用されている用語で、使用方法としてすべてが「擦る」と記載しなかったものもある。

略語:APIC、感染管理疫学専門家協会; CDC、米国疾病管理予防センター;CHG、グルコン酸クロルヘキシジン; CLABSI、中心静脈関連血流感染症; IPA、70%イソプロピルアルコール; NM、勧告に​​は記載されていない。SHEA、米国医療疫学学会

a その他のガイドラインについては参考文献Greene,1 Hallam34

参照。b 括弧内の項目は、各文献で使用されている用語で、使用方法としてすべてが「擦る」と記載しなかったものもある。

消毒液の乾燥時間

最近の研究では、DNCCに使用する消毒液は微生物の負荷や血流に入り込む可能性を減らすためアクセス前に乾かすべきであることが示唆された。36 DNCCを消毒液で擦った後の乾燥時間は様々である。IPAは5秒、CHG/IPAは20秒で乾燥するが、ポビドンヨードは6分経過しても乾かない。36 しかし消毒液の乾燥の必要性について触れている国内・国際ガイドラインはわずかでしかない(表3)。1 残念ながら、DNCCの消毒後の乾燥時間について述べている臨床研究やin-vitro研究は数件のみで、様々な乾燥時間や全く乾燥させない場合の消毒の有効性に対する影響を比較したものは皆無であった。1 最近のレビューでDNCCの消毒について評価した21研究のうち、1つの研究は乾燥時間を5秒間と特定し、10研究は30秒間以上、10研究は乾燥を行ったかどうかを特記していなかった。1 医療従事者が感染リスクをどのように減らすかを明確に知るために、周術期環境での至適乾燥時間についてのさらなる研究が必要である。

DNCCへの消毒液注入は有害か?

最近の研究では消毒液の注入を避けるためDNCCはアクセス前に乾燥させることが推奨されている。36 少量の消毒液がDNCCに注入された場合有害か否かという疑問は依然解決に至っていない。IPAは主に有毒なアセトンに代謝されるためこれは大きな懸念事項である。16,37,38 2件のin-vitro研究でIPAで擦り15秒間乾かす37 、もしくはCHG/エタノールで擦り30秒間乾かした後で生理食塩水を注入し38、比較を行なった。これらの研究では試験回路の液体のアルコール度数は検出不可能37か「低い」のいずれかであることが示された38 (In-vitroでの注入1回あたりの最大量µgは、新生児において推定有毒血中濃度閾値を生成する値の8%未満であり、0.25 mg / mlを超えていた)。消毒液が乾燥する前のDNCCを介したアルコールまたはCHGの潜在的IV注入に関する研究は、現時点では数が少ないため、さらなる研究が必要である。

IPAキャップ

国内および国際的ないくつかの推奨事項にはDNCCにIPAキャップを使用する選択肢が含まれている。キャップにより受動的な消毒が行われ、手で擦る必要もなく(最小限の接触時間後)、消毒の視覚的指標がもたらされ、汚染バリアが得られるため、手で行う場合と比較して消毒のコンプライアンスが増加する可能性がある。1,15,17,39 IPAキャップを使用する場合、アクセス前にDNCCでごくわずかな接触時間を要するが(短時間手で擦る必要がある)、アクセス前に消毒液を乾燥させ、キャップは毎回使用後に廃棄することとなる。

最近の「予備的」RCTでは、成人のCLABSI発生率においてIPAまたはCHG/IPAで擦った場合とIPAキャップを使用した場合の間に有意差はないことが明らかになった。27 2019年のSHEAの推奨事項15 では、IPAキャップの使用を「ベストプラクティス」としていたが、この2021年の「予備的」研究では、より大規模で決定的な研究を行う必要があると示唆している。27 2件のin-vitro研究では、新生児におけるIPAキャップの使用に注意を促した。これはIPAキャップ除去後の生理食塩水の注入により「顕著な」レベルのIPAが試験回路の液体に認められたためである。16,37,38 ある研究では、IPAキャップ使用から24時間後に試験回路の液体中のIPAが顕著な値となり、DNCCを7日間IPAキャップに曝露した場合はその値がさらに高くなったことが明らかになった。38 またある研究では IPAキャップ除去後、注入前にDNCCを30秒間乾燥させたため、IPAが試験回路に注入されたという結果も問題である。38 新生児への毒性のリスクを減らすための代替手段として、IPAの代わりにエタノールを含有する消毒液のキャップを使用することが提案されている。38

結論

IV血管カテーテルにアクセスする際には感染リスクを下げるために考慮すべき課題が数多く存在する。OLSのデザインは臨床使用時に管腔内微生物汚染が高率に発生し、IPAパッドもポートスクラブデバイスもOLSを効果的に消毒しない。対照的に、DNCCの注入面は極めて効果的に消毒することができる。最適な消毒剤と消毒方法、および最適なDNCC設計については未だに疑問が残るが、複数の研究において消毒済みDNCCはOLSと比較し管腔内汚染率が低いことがわかり、一部の研究では、OLSと比較して消毒済みDNCCのHAI率が低いことがわかった。現在の研究では、OLSが消毒済みDNCCと比較して有益であるとは示されていない。メーカーは、OLSではなくDNCCとDNCC三方活栓を付属したIVチューブセットを提供する必要があり、DNCC三方活栓も単品として販売すべきである。動脈チューブセットには、採血用のDNCC活栓と、管腔内の無菌性を維持するトランスデューサーでゼロ調整できるデバイスを含める必要がある。OLSは無菌野での使用に制限する必要がある。DNCCの消毒を医療従事者が順守することは、DNCCを安全に使用するために重要であり、手指衛生と無菌操作に関する定期的な評価と再教育を含める必要がある。血管アクセスに関連するHAIや誤薬のリスクを減らすために、メーカーまたは薬局で準備された投薬と注入物の使用を増やし、安全な方法を使用することも推奨される。DNCCの消毒への至適アプローチに関するコンセンサスは得られておらず、多くの疑問も残っているが、現在の文献を統合すると、アクセス直前に、DNCCをアルコール含有消毒剤で5秒間以上擦るか(一部の文献は15秒以上擦ることを推奨)、もしくはIPAキャップを適切に使用し、その後注入前に乾燥させることを示唆している。IPAキャップが、手で擦るよりもHAIを減らす上で既存の他の方法よりも効果的であるかどうか、そして新生児においても安全に使用できるかどうかを判断するには更なる研究が必要である。

 

Elliott S. Greene医学博士は、ニューヨーク州アルバニーのアルバニー医科大学麻酔科の麻酔科教授である。


著者に開示すべき利益相反はない。


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