重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によるCOVID-19に関する周術期の考慮事項アップデート

Liana Zucco, MD; Nadav Levy, MD; Desire Ketchandji, MD; Michael Aziz, MD; Satya Krishna Ramachandran, MD
免責事項:本資料の閲覧者は、その内容に含まれる情報を適切な医療および法律顧問と共に検討し、特定の診療環境との関連性、および州と連邦の法律と規制の遵守について、独自に判断する必要がある。APSF は正確な情報を提供するために最善を尽くす。ただし本資料は情報提供のみを目的として提供されており、医学的または法的助言を構成するものではない。また本記事は、APSF の推奨または規約(別段の記載がない限り)を示すもの、臨床上の推奨事項を行うもの、または医師による診断に代わるもの、および独立弁護士との協議に相当するものとして解釈されるべきではない。

はじめに

コロナウィルス (COVID-19)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が引き起こしたCOVID-19パンデミックは、世界中の生命に大きな影響を与え続けており、起こりうる甚大な心理的および社会的影響も含めて、医療システムと経済に莫大な負担を生み出している。中国の武漢で発生したSARS-CoV-2アウトブレイクは急速にパンデミックへと拡大し、現在では150か国以上に伝播し、2020年4月29日時点で310万人以上(米国だけでも100万人以上)の感染が確認されている。 1,2

現時点の推定では、入院患者の死亡率は2〜20%、人工呼吸器を必要とする患者の死亡率は最大88%であると示唆されている。3–5 SARS-CoV-2の基本再生産数(R0)は2.2–2.7と推定されている、6つまり1人の感染者が2人以上に感染を伝播させるとみなされている。これにより急速に指数関数的に感染が拡大する可能性があり、実際に今、米国中のコミュニティでそれが起きている。7

ヒトからヒトへ感染することを考慮すると、8-10 SARS-CoV-2は周術期に関わるすべての医療者に高いリスクをもたらし続けていると言える。我々は、周術期や病院の責任者たちに、COVID-19感染疑いまたは感染既知の患者に介入する際の戦略を準備することを強く求める。本稿の目的は、周術期の慎重な安全対策を提示することであるが、これらの対策は現行のアウトブレイクおよび過去のウイルス感染アウトブレイクの教訓に基づいている。11 具体的には、SARS-CoV-2、SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)のウイルス感染防止に成功した、または失敗した医療現場の対策について説明する。非薬物的介入が感染拡大を抑える主対策であるなか、これだけの規模のパンデミックとの闘いにおいては、迅速な公衆衛生学的対策の役割が世界中の経験から重要視されている。

SARS-CoV-2 感染伝播

このウイルスは、感染した呼吸飛沫の吸入を介して、ヒト間で感染伝播しうる。特に、近接した(6フィート以内 訳注:約1.8m以内)飛沫曝露の場合、比較的閉鎖された環境でエアロゾルに継続的に曝露した場合は感染リスクが高まる。12,13 また、粘膜面(すなわち、目、鼻、口)と直接的または間接的に接触することでも、そして消化管を介しても、伝播する可能性がある。12,14 さらに、汚染された表面(媒体)と直接的または間接的に接触することで伝播し、その後の自己免疫獲得や感染となりうることを示唆するエビデンスが出ている。他のコロナウイルスと同様に、SARS-CoV-2は、約12時間(布地やボール紙の表面)~72時間(プラスチックや金属の表面)体外で生存できる。11,15,16

SARS-CoV-2の伝播を防ぐことが、その影響を軽減するための最も効果的な公衆衛生学的活動であり、感染者の早期覚知、接触者の追跡、感染者と接触者の隔離と検疫、サポートなどが行われる。周術期は、認識される以前のSARS-CoV-2への曝露リスクをもつ期間である。したがって、医療者が曝露を管理し、感染対策を実施するために、病院全体のガイドラインを用意する必要がある。

過去のコロナウイルスアウトブレイク(SARS-CoV, MERS-CoV)の教訓:

2002年のトロントでのSARS-CoVアウトブレイクと2012年のMERS-CoVアウトブレイクでは、大部分の患者が院内感染、特にエアロゾルが発生する処置を行った医療者たちの感染に関連して発生していた。17 既存の安全手順があったにもかかわらず、SARS-CoV感染既知のICU患者の気管挿管(複数回試行した場合、室内に3人以上いた場合)に関連して医療者のSARS-CoV感染が起こった。18 他のリスク因子として、ネブライザー、CPAP、BiPAP、ネーザルハイフローなどエアロゾルを発生させる処置中の患者との接触があった。11 ただし、トロントでのSARS-CoVアウトブレイクの第2波では、改善策とPPE遵守により、院内感染は減少した。ネーザルハイフロー酸素カニューレが、健常ボランティアが咳をした際のエアロゾル拡散を増やさない可能性を示唆した最新のデータもある。19

現行のアウトブレイク(SARS-CoV-2)の教訓:

中国、イタリア、英国、米国での経験から、患者の大部分は明らかに市中感染によるものである。1 しかし、これらの国のさまざまな地域で疾患有病率が高いままであり、さらにどこでもできる信頼性の高い検査がないこの状況では、周術期医療の現場で院内感染のリスクは高まっている。症状が出る直前の期間は、SARS-CoV-2のウイルス排出が多くなるので伝播の可能性が高いと考えられているため、すべての(無症状)患者を感染の高リスクとして認識すべきである。20,21 医療者さらには患者の安全を確保するために、SARS-CoV-2の院内感染を防ぐには、協調的な取り組みと病院をあげた全面的なサポートが必要である。22

COVID-19の感染拡大が急速であるため、病院が入院患者増加に備えることやリスク軽減策を実施することには時間的な制約がある。特に、個人用防護具(Personal Protective Equipment, PPE)の供給不足、情報の不明確さ、リーダー間で考えが統一されていないことによる不安と恐怖は、医療者にさらなるプレッシャーをかけることになる。メッセージが統一されていないことは混乱を引き起こし、緊張を生み、対策の実行を遅らせるということを今回我々は学んだ。さらに、次々変わるガイドラインを遅れずに入手し、それを病院全体に明確に伝えることは、簡単ではない。病院内のスタッフをサポートしてコミュニケーションを円滑にとるため、一元管理を推奨する。

手術室および麻酔業務環境での感染伝播:

手術室内の麻酔業務環境には、飛沫が付着できる表面が多いので、適切な飛沫予防策および除染手順をとらないとウイルスにとっての宿主となる可能性がある。前述のように、感染者の痰をエアロゾル化しやすい周術期の処置は、医療者の曝露の原因となる。麻酔専門家や集中治療専門家にとって、挿管中および抜管中は、曝露リスクが最も高い。気道管理中は呼吸飛沫と直接接触するため、特に注意が必要なのである。23,24

手術室のすぐ外のエリアと手術部の周囲は、エアロゾル発生のリスクは低いとされるが、依然として伝播の原因になりうる。場所に関係なく、PPEの不足、PPEの不適切な使用、手指衛生の不充分さは、ベッドサイドの医療者への感染伝播につながりうる要因である。25,26

COVID-19患者に対する周術期医療に関する推奨事項

症状のない患者や医療者からSARS-CoV-2が感染伝播する可能性があるため、分泌物への曝露を減らすために、すべての患者の周術期管理で標準診療をエスカレーションすることを推奨する。

手指衛生:

頻繁な手洗いは、交差感染を防ぐための最も重要な衛生対策のうちの1つであり、積極的に実施されなければならない。すべての麻酔業務環境の内または近傍に、手指衛生用アルコールゲルを設置すべきである。手指衛生はガイドラインに従って入念に行う必要がある。具体的には、手袋を外した後:汚染部位に接触した後:麻酔器や麻酔カートおよびその中身に触れる前:患者と接触(体温計留置や経鼻胃管留置など)した後は毎回行う。

個人用防護具(PPE):22,27,28

すべての医療者のためにPPEが使用できる必要がある。PPEには、N95マスク(あるいは同等のもの)または電動空気清浄マスク(powered air-purifying respirator, PAPR)、ゴーグルやフェイスシールドなどの目の保護具、使い捨てヘッドカバー、不透過性で流体耐性のガウン、靴カバー、手袋2セットが含まれるべきである。使い捨てのヘッドカバーは、飛沫に曝露したかもしれない頭髪に触れて手が汚染するリスクを軽減する。PPEの装着前と離脱後には手洗いが必須である。

N95マスクは国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health)の濾過効率基準を満たしており、大きさ0.3ミクロン以上の粒子を95%除去し、飛沫感染や空気感染を防御することが保証されている。N95マスクは、必ず圧着をテストしてから使用するもので、コロナウイルスとの接触とエアロゾルの拡散を防御できる。または、N95マスクの代わりにPAPRも使用できる。PAPRはN95と同等の防御効果を持つうえ、顔のサイズ、顔毛がある場合、複数回使用する場合など、より多用途で利用できる。自己汚染を防ぎながらPAPRを着脱するのは難しいので、同僚が注意深く観察しながら、感染リスクの軽減に注意する必要がある。すべてのCOVID-19感染既知および感染疑い患者に対しては、少なくともN95マスクまたは同等のものを使用する必要がある。

医療者と病院は、PPEの正しい着脱プロトコルを見直す必要がある。実際と同じ環境 (本来の場所)でPPEを着用しながらの、挿管・抜管の模擬訓練を検討すること。これは医療者間でPPEの適切な使用を促進し、規則遵守の障害となっているものを見つけ出す機会である。PPEを完全に遵守できないで「レスキューのような」緊急気管挿管をしなければならない事態を回避するために、病院レベルでの検討が必要である。

気道操作(挿管と抜管):

COVID-19 気道管理エアロゾルが発生する処置や気道管理を行う前に、医療者は、前述した適切なPPEを着用することで自分たち自身を防護する必要がある。挿管中および抜管中は、適切なPPEを着用しているスタッフを除いて、不必要な曝露リスクを減らすために、室内にいるスタッフ数を制限すること。予期せぬ気道確保困難の際のプランが検討済みであることを確認し、声門上デバイスや外科的気道確保キットを含めた、必要な緊急器具がすぐに利用できるようにしておく。

気管挿管に必要な器具を患者のすぐ近くに準備しておき、汚染された器具を短い移動距離で廃棄するプランを立てておくこと。気管挿管中は手袋を二重に着用して、挿管直後に喉頭鏡のブレードを外手袋で覆うことを検討する。または、使用した喉頭鏡を直接密閉バッグに入れてから、外手袋を外すこと。25

抜管は、挿管に比べてエアロゾルの発生が多いため、前述のようにPPEを厳守して実施する必要がある。室内にいる他の医療者(呼吸療法士や看護師など)もPPEを着用していることを確認すること。抜管時には、患者の口鼻を覆うガーゼか保護用の布防具の使用を検討すること。汚染された器具は慎重に処分すること。嘔吐とそれに伴うウイルス拡散のリスクを軽減するため、予防的制吐薬の投与を積極的に検討すること。

周術期ワークフローの計画とシミュレーショントレーニング:

院内のCOVID-19患者管理専用の周術期ワークフローの必要性を見直すこと。29 具体的には、ワークフローの再設計、チェックリストの導入、ケアのリスクや認識のギャップを明確にするためのSARS-CoV-2検査、を検討する。COVID-19患者用に特定の手術室を指定し、不要な物品を移動させ、動かせない器具にはプラスチック製のカバーを設置し、汚染を最小限に抑えること。COVID-19患者の周術期の変化に関する認識を向上し、医療チーム全体でメンタルモデルを共有するために、現場を使ったシミュレーションによるチームトレーニングを行うべきである。30 PPE着脱、挿管、抜管、COVID-19患者の有害事象への対応に関するシミュレーショントレーニングも推奨する。著者の所属機関のオンライン資料はhttps://www.anesthesiaeducation.net/qsi_covid19/で一部入手可能である。

コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染疑いまたは感染既知患者の気道管理に関する推奨事項

一般的な予防策:

  1. 医療者自身の保護を最優先とする。空気・飛沫・接触感染予防のための隔離を達成するため、全ての医療者に個人用防護具(PPE)を準備する必要がある。PPE着脱のプロトコルを見直すこと。全てのスタッフが、PPE着用やその他の防護的予防策を実施するための十分な時間が確保できるように、事前に計画を立てておくこと。自己汚染を回避するために細心の注意が必要である。
  2. SARS-CoV-2感染既知または感染疑い患者は、術前患者待ち合いエリアやPACU(麻酔後ケアユニット)エリアに入れるべきではない。これらの患者には、指定された手術室を割り当てて、スタッフの曝露を最小限にするために扉に表記をする。感染患者は手術室内で術後回復させるか、またはICUに移送し陰圧室に収容すべきである。呼吸回路を外す事態に備えて、鉗子(クランプ)を準備しておくこと。
  3. 気道操作および不測の事態に対応できる十分な器具が利用できる状態にあることを確認しておくこと。さらに、気管挿管を行う前に、0.3ミクロン以上の浮遊粒子の少なくとも99.97%を除去する高品質HME(Heat and Moisture Exchanging, 熱水分交換)フィルター(人工鼻)と、気管チューブ鉗子が利用できる状態にあることを確認すること。

気道操作中:

  1. 圧着テスト済みの使い捨てN95マスクかPAPRまたは同等のマスク、アイシールド、ガウン、2組の手袋、保護靴袋を着用すること。どの麻酔導入でも行うような標準的なモニタリングを行うこと。
  2. 可能なら、気管挿管を行える状態にある者のなかで最も経験豊富な麻酔専門家を指名する。この時期には、SARS-CoV-2感染疑いまたは感染既知患者への訓練生による気管挿管は避けること。
  3. 予期せぬ気道確保困難に対するプランについて話し合い、声門上デバイスや外科的気道確保キットを含めた、必要な緊急器具がすぐに利用できる状態にあることを確認しておくこと。
  4. 特別な適応がない限り、意識下ファイバー挿管は避けること。噴霧された局所麻酔薬はSARS-CoV-2をエアロゾル化するため、特別な適応があって意識下ファイバー挿管を行う場合は噴霧以外の局所麻酔法を用いるべきである。挿管者が最も精通している器具を使用すること。気管挿管の成功率を上げるために、ビデオ喉頭鏡が挿管器具の第一選択として推奨されている。31
  5. 100%酸素で最低5分間、または目標とする呼気終末酸素濃度に達するまで、前酸素化を行うこと。
  6. 用手換気を回避するために、Rapid Sequence Induction(RSI)を実施すること。輪状軟骨圧迫を行う熟練したアシスタントがいることを確認すること。RSI変法中に用手換気が必要となる場合は、HMEフィルターが設置されていることを確認し、少ない1回換気量で行う。
  7. 気管挿管直後に初回の陽圧換気を行う前に、気管チューブのカフを膨らませる。
  8. フェイスマスクまたは気管チューブと、呼吸回路またはリザーバーバッグの間に、高品質HMEフィルターを常に配置すること。
  9. 気管挿管後はすぐに喉頭鏡をなにかで覆うか、密閉できる標本袋に収める。使用済みの気道器具は全て、二重のジッパーがついたビニール袋の中に密封する。それら使用済みの気道器具は、洗浄と消毒のために片付けなければならない。
  10. 抜管は、PPEを厳守した環境下で行う必要がある。抜管中には、患者の口鼻を覆う保護用の布防具の使用を検討すること。汚染された器具は慎重に処分すること。
  11. PPEを外した後、手を洗うまでは、髪の毛や顔に触れないこと。
  12. 現場レベルで、またはhttps://intubatecovid.orgレジストリなどのオンラインプラットフォームを利用して、COVID-19患者の気道操作に関与した医療者の症状を追跡管理することを検討すること。

COVID-19 感染既知あるいは感染疑い患者の気道管理に関する提言

非緊急手術または待機手術の周術期サービスを再開するための推奨事項

緊急ではない手術と、SARS-CoV-2感染曲線の平坦化が進んでいる待機手術の再開を、病院が計画し始めているが、患者と医療者を守るために、地方や国および国際的なガイドラインに則り、最も高いエビデンスに基づいた基準を遵守し続けることが依然として重要である。COVID-19が再発する可能性も高く、多くの理由で懸念がある。それは、検査実施可否のばらつき、過去の曝露で獲得した免疫の不明瞭さ、疾患の有病率などである。32したがって継続的な公的努力をもって監視を続ける必要性が唱えられている。

American College of Surgeons (ACS)、American Society of Anesthesiologists (ASA)、American Hospital Association (AHA)、Association of Perioperative Registered Nurses (AORN)の共同声明(COVID-19パンデミック後の待機手術再開のためのロードマップ33 で示唆されているように、非緊急/待機手術の周術期サービスの再開にあたっては、緩やかで段階的な再開となるよう病院ごとに慎重に計画することを推奨する。非緊急/待機手術の再開に関する病院のポリシーとワークフローには、検査実施の可否、地域における疾患有病率、手術内容と適応、病院とICUの収容可能数、スタッフの必要度を考慮する必要がある。患者と医療者の距離を最適化するために、物理的な業務空間を緻密に計画する必要がある。継続的なスタッフのトレーニングと、病院全体としてのCOVID-19対応への支援準備を引き続き行う必要がある。34 前述の共同声明に従って、医学的な適応があり、時間的な猶予がない手術を再開するための段階的アプローチを推奨する。34–36 限られた手術枠を巡る競争を緩和する方法として、臨床的な患者の手術必要性と病院の収容力を優先する方針とプロトコルを支持する。

パンデミック脱却段階でも、症状に基づく術前スクリーニングが引き続きリスク管理の基礎である。有症状の患者に対して、状況が許せば14日間手術を延期してフォローアップするための明確な手順を踏めるように、専用のサービスを提供している病院がほとんどである。

COVID-19 テスト

術前検査の推奨事項

術前検査は、3つの主要な目的のために世界中で実施されている。その目的とは、

  • 有症状の患者と検査陽性の患者の待機手術を延期すること。
  • 感染疑いまたは感染既知のCOVID-19患者に対する適切なケアのための周術期ケアプロトコルを始動させること。
  • PPEおよび周術期ケアプロトコルの適切な使用を導くこと。

ASAとAPSFが共同声明のなかで発表した推奨事項(ASAとAPSFによるCOVID-19ウイルス周術期検査に関する共同声明37 を我々は支持している。SARS-CoV-2の有病率を特定するための集団検査も行われる必要がある。

地域でSARS-CoV-2感染が認められている場合:38

  1. すべての患者に対して、来院する前に症状をスクリーニングする必要がある。症状を申告している患者に対しては、さらに精査を進めるべきである。他のすべての患者に対しては、非緊急手術を受ける前に、核酸増幅検査(PCR検査など)を行うべきである。病院は、実施中の検査結果が出るまでの間、患者に自己隔離を要請する場合がある。
  2. 検査は偽陰性の可能性があるため、手術室スタッフは飛沫予防策(サージカルマスクとアイシールド)を行う必要がある。エアロゾルが発生する処置を行う前に、室内の医療者たちは、N95マスク、アイシールド、手袋、ガウンを着用する必要がある。
  3. 患者のSARS-CoV-2検査が陽性だった場合、感染力がなくなり、COVID-19からの回復が実証されるまで、待機手術を延期する必要がある。患者は以下のいずれかの状態になるまでは感染力があるとされる:
    1. CDCが推奨する検査ベースの戦略
      1. 解熱薬を使用せずに解熱しており、
      2. 呼吸器症状が改善しており、
      3. 24時間以上の間隔で行った2回のSARS-CoV-2検査が陰性となっている。
    2. CDCが推奨する非検査ベースの戦略
      1. 解熱から少なくとも72時間以上経過しており、その間に解熱剤の使用がなく、呼吸器症状が改善しており、
      2. 最初に症状が出てから少なくとも7日間以上経過している。
  4. 現時点では、SARS-CoV-2からの十分な回復について、生理学的変化の定義として推奨できるものはない。ただし、評価に患者の運動耐容能(metabolic equivalents, METS)を含める必要はある。

地域でSARS-CoV-2感染がほとんどまたはまったく認められていない場合:

  1. すべての患者に対して、来院する前に症状をスクリーニングする必要がある。
  2. 症状を申告している患者に対しては、さらに精査を進めるべきである。

コメント

現在のところワクチンや実証済みの薬物的介入がないので、引き続き、公衆衛生学的な取組みと、米国疾病予防管理センター(CDC)、世界保健機関(WHO)、地方政府によって承認された非薬物的介入に重点を置くことを推奨する。また、十分なソーシャルディスタンスを確保し、院内感染を低減するために、周術期のなかでテクノロジー(遠隔医療)を継続的に活用していくことを推奨する。39

 

Dr. Liana Zuccoは、Beth Israel Deaconess Medical Centre麻酔科の周術期質安全部門のフェローであり、マサチューセッツ州ボストンのHarvard Medical SchoolのHealthcare Quality & Safety修士号志望者である。

Dr. Nadav Levyは、Beth Israel Deaconess Medical Centre麻酔科の周術期質安全部門のフェローであり、マサチューセッツ州ボストンのHarvard Medical SchoolのHealthcare Quality & Safety修士号志望者である。

Dr. Desire Ketchandjiは、オレゴン州ポートランドの Oregon Health and Science University麻酔科の集中治療医学部門のフェローである。

Dr. Michael Azizは、Clinical Affairsの暫定副議長であり、オレゴン州ポートランドのOregon Health and Science Universityの麻酔科周術期医療科の教授である。

Dr. Satya Krishna Ramachandran は、Quality, Safety and Innovationの副議長であり、麻酔・集中治療・ペインクリニック科、Beth Israel Deaconess Medical Center、マサチューセッツ州ボストンのHarvard Medical Schoolの准教授である

Dr. Zucco、Dr. Levy、Dr. Ketchandji、Dr. Azizに利益相反はない。Dr. Ramachandran は、科学顧問を務めるFresenius Kabi USAから個人的な報酬を得ている。

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